
特定非営利活動法人 中小企業・地域創生ネットワークでは、2026年4月17日(金)、第2回「中小企業振興・地域創生セッション」をオンラインにて開催しました。
今回のテーマは、「自前主義の限界を突破する、地方の現場から始める中小企業支援の新しい形」です。
全国の商工会・商工会議所、金融機関、自治体、地域支援機関の現場では、限られた人員のなかで、日々増え続ける相談業務や、DX・GX・AI活用、事業再生、販路開拓、事業承継など、複雑化する経営課題に向き合っています。
一方で、支援ノウハウは各地域・各担当者のなかに蓄積されやすく、他地域との共有や外部専門人材との連携は、まだ十分とは言えません。
本セッションでは、そうした「地域支援の現場が抱える構造的な課題」に対して、外部専門家のネットワークをどのように活用し、地域の支援力を高めていくことができるのかを、具体的な事例を交えながら考えました。
支援機関を支援するという視点
冒頭では、当法人理事の土屋俊博より、地域の中小企業支援を取り巻く現状について問題提起を行いました。
人口減少、高齢化、後継者不在、技術・ノウハウの断絶、小規模事業者への支援の細りなど、地方の中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
その一方で、地域企業を支える商工会、金融機関、自治体などの支援機関自身も、人員不足、案件増加、専門性の不足、支援ノウハウの属人化といった課題を抱えています。
こうした状況に対し、当法人では「支援機関を支援する」という視点を大切にしています。
地域の主役は、あくまで地域で活動する事業者であり、その事業者を日々支えている地域の支援機関です。外部専門家は、地域の現場を置き換える存在ではありません。地域の皆さまが持っている知見や関係性を尊重しながら、足りない専門性や新しい視点を補い、支援の選択肢を広げる存在であるべきだと考えています。
NPOが担う「つなぎ役」としての機能
中小企業・地域創生ネットワークは、2023年3月より活動を開始し、地域経済の成長発展と地域振興に資することを目的として、各地の支援機関・自治体・企業・専門家との連携を進めてきました。
当法人の特徴は、中小企業診断士をはじめとする多様な専門家ネットワークを活用しながら、地域のプレイヤーと協働して支援を組み立てていく点にあります。
具体的には、以下のような領域で活動を展開しています。
- 地域の現状を踏まえた企画・計画支援
- 調査・コンサルティング
- 支援人材の育成・研修
- 地域資源を活かした製品化・販促支援
- 商工会・自治体・金融機関等との包括的な連携支援
特に重視しているのは、単発の専門家派遣にとどまらず、地域の支援者自身が学び、実践し、次の支援に活かせる仕組みをつくることです。
外部専門家が答えを持ち込むのではなく、地域の支援者と一緒に考え、実践し、ノウハウを地域に残していく。その積み重ねこそが、持続的な地域支援につながると考えています。
首都圏の専門人材と地方の支援ニーズをつなぐ
セッションでは、首都圏に集中する中小企業診断士等の専門人材と、地方における支援人材不足とのミスマッチについても議論しました。
中小企業診断士は全国に多く存在する一方で、実際の活動機会は首都圏に偏りがちです。特に近年は、企業内診断士や副業・兼業で活動する診断士が増え、地域支援に関心を持ちながらも、具体的な関わり方が見つからない方も少なくありません。
一方で、地方の現場では、マーケティング、IT、財務、人事、事業承継、海外展開、デザイン、SNS活用など、多様な専門性を必要とする相談が増えています。
この需給のミスマッチを解消することは、地域にとっても、専門人材にとっても、大きな可能性を持っています。
地域にとっては、外部の知見を得ることで支援の幅が広がります。専門人材にとっては、地域のリアルな経営課題に向き合うことで、実践的な経験を積み、セカンドキャリアや社会貢献の新たな道を見出すことができます。
当法人では、こうした双方の可能性をつなぐ「コーディネーター」としての役割を担っていきたいと考えています。
島田市・河津町での実践事例
当日は、静岡県島田市や河津町での取り組みについても紹介しました。
河津町では、商工会等と連携し、首都圏の中小企業診断士が現地を訪れ、地域診断や事業者支援に関わる取り組みが進められてきました。
この活動では、参加者が地域の魅力に触れながら、観光、産業、事業者の課題を学び、地域の皆さまとともに支援の可能性を考えます。単なる研修や視察ではなく、地域との関係性を育てながら、支援者自身も実践経験を積む機会となっています。
また、島田市では、商工会と連携し、個別企業支援を中心としたプロジェクトが行われています。首都圏の診断士、商工会職員、地域事業者がチームとなり、オンラインも活用しながら数か月にわたり伴走支援を行う形です。
島田市の地域資源である「緑茶」をテーマにしたマーケティングやブランディング支援など、地域ならではの資源を活かした支援も展開されています。
こうした取り組みでは、事業者が第三者の視点を得られるだけでなく、商工会職員にとってもOJT型の学びとなり、参加した専門家にとっても地域支援の実践機会となります。さらに、支援終了後に参加者が家族で地域を再訪するなど、自然な形で関係人口の創出にもつながっています。
地域支援は「越境学習」の場でもある
今回のセッションでは、地域支援を「越境学習」として捉える視点も共有されました。
普段は大企業や都市部で働く人材が、地域の小規模事業者や支援機関と向き合うことで、日常の業務では得られない学びを得ることができます。
地域の現場には、教科書通りにはいかない経営課題があります。経営者の思い、家族や従業員との関係、地域内の人間関係、商圏の制約、後継者問題、観光や産業構造の変化など、複数の要素が絡み合っています。
そうした現場に入り、相手の状況を理解しながら支援策を考える経験は、企業人材の育成、リーダーシップ開発、セカンドキャリア形成にとっても大きな意味を持ちます。
地域支援は、地域のためだけのものではありません。支援に関わる人自身が学び直し、社会との接点を広げ、自分の専門性を再発見する機会でもあります。
これからの連携に向けて
セッションの後半では、今後の連携可能性について意見交換を行いました。
議論のなかでは、次のようなテーマが挙がりました。
- 商工会・支援機関自身のDX化支援
- 生成AI活用に関するリテラシー教育
- 販路開拓やマーケティング支援
- 事業承継・M&A・廃業支援を含む出口支援
- セカンドキャリア人材の地域支援への参画
- デザイナー、マーケター、IT人材など多様な専門家との連携
- 地域と専門人材をつなぐコーディネーター機能の強化
これらはいずれも、単独の支援機関だけで解決することが難しい課題です。
だからこそ、地域の支援機関、自治体、金融機関、専門家、企業人材が、それぞれの強みを持ち寄り、無理なく継続できる連携の形をつくることが重要です。
全国の支援機関の皆さまへ
今回のセッションを通じて改めて確認できたのは、地域支援の現場には、まだ多くの可能性があるということです。
人手が足りない。専門性が足りない。新しい企画を考える余力がない。地域内だけでは解決策が見つからない。
そうした課題は、決して一つの地域だけのものではありません。全国の支援機関が共通して抱えている課題でもあります。
中小企業・地域創生ネットワークは、そうした現場の皆さまと一緒に、地域に合った支援の形を考え、必要な専門人材や知恵をつなぎ、具体的な取り組みとして実装していくことを目指しています。
私たちは、地域の現場を尊重しながら、外部の専門性を活かし、地域の支援力を高めるための「伴走者」でありたいと考えています。
全国の商工会・商工会議所、自治体、金融機関、産業支援機関の皆さまのなかで、
「地域企業への支援メニューをもう一段広げたい」
「外部専門家との連携を試してみたい」
「職員の学びやOJTにつながる実践型の支援をつくりたい」
「地域資源を活かした新しい企画を一緒に考えたい」
とお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、当法人にお声がけください。
情報共有からでも、個別相談からでも、小さな実証的な取り組みからでも構いません。
地域の課題を、地域だけで抱え込まない。
支援機関の悩みを、支援機関だけで抱え込まない。
外部の知恵と地域の現場力をつなぎながら、これからの中小企業支援と地域創生の新しい形を、全国の皆さまとともにつくっていきたいと考えています。
今後も中小企業・地域創生ネットワークでは、地域支援に関する実践事例の共有、専門人材とのマッチング、支援機関向けの研修・セミナー、個別相談を通じて、全国の地域支援の現場と連携してまいります。全国の中小企業支援現場の「自前主義の限界」を突破し、首都圏の専門家集団とともに描く、地域再生プログラムに関するご紹介を行いました。
開催概要:
- 開催日時: 2026年4月17日(金) 18:30〜20:00
- 方法:オンライン開催(Zoom)
- 参加費:無料
- 主催:特定非営利活動法人中小企業・地域創生ネットワーク
当日の動画はこちらです。